飲み込みに不安がある方や介護に携わる方なら、とろみをつけるときの「ちょうどよい濃さ」が分からず戸惑った経験はありませんか。
トロミ剤の種類や温度、ドリンクごとの相性、ダマ対策など気をつける点が多く、間違えると飲みにくさや安全性の問題に繋がります。
この記事では、とろみ水の作り方を分かりやすく段階的に解説し、計量のコツや濃度の目安、飲み物別のポイント、保存方法と最終チェックまで実用的にお伝えします。
粉末型と液体型の違いやダマを防ぐ手順、温度別の対応、見た目で判定する方法も実例で紹介します。
まずは必要な材料と基本手順から一緒に確認していきましょう。
とろみ水の作り方

とろみ水は飲み込みやすさを高めるために用いられる調整飲料です。
ここでは家庭や介護現場で役立つ基本的な作り方と注意点をわかりやすく解説します。
必要な材料
まずは準備するものを確認してください。
- トロミ剤(粉末型または液体型)
- 計量スプーン
- 混ぜる用のスプーンまたはシェイカー
- 容器(蓋つきが便利)
- 使用する飲み物
粉末型トロミ剤
粉末型は計量と調整がしやすく、製品によっては冷水でも溶けやすい特徴があります。
使用時は粉末がダマになりやすいため、少量ずつ振り入れてその都度よく混ぜることが基本です。
また、粉末の種類によっては時間経過でさらにとろみが増すものがあるため、作成後の変化を観察してください。
メリットは携帯性と保存のしやすさで、デメリットは混ぜ方にコツが必要な点です。
液体型トロミ剤
液体型は均一に混ざりやすく、ダマができにくい点が利点です。
注入する感覚で直接加え、素早くかき混ぜるだけで調整可能な製品が多いです。
ただし、濃度調整の際は少しずつ加えることを心がけ、過度に加えないよう注意してください。
開封後の保存や賞味期限に気を付ける必要がありますが、使用感は扱いやすいです。
基本手順
まず容器に飲み物を適量用意します。
次に計量スプーンでトロミ剤を規定量または少量ずつ加えます。
加えたらスプーンで底からしっかりと混ぜ、ムラがないか確認します。
必要であれば数分待ってとろみの安定を確認し、再度軽くかき混ぜます。
ダマ防止
ダマを防ぐ基本は少量ずつ加えることです。
粉末型を使う場合はふるいにかけるか、容器の縁で軽くこすりながら少しずつ入れてください。
混ぜる際は底からすくい上げるように回すと均一になります。
シェイカーを使うと素早く攪拌でき、ダマが残りにくくなります。
温度別対応
冷たい飲み物ではとろみの出方が遅い製品と速い製品があるため、使用説明に従ってください。
熱い飲み物は一部のトロミ剤でとろみが強く出ることがあり、少量ずつ加えることが大切です。
牛乳や果汁など成分の違う飲料は反応が異なるため、まず少量で試してから本格的に作ると安心です。
判定方法
とろみの判断は視覚と触覚を組み合わせるのが実用的です。
一般にスプーンやストローでの流れ具合を確認してから提供します。
とろみレベル | 目安 |
---|---|
サラサラ | 素早く流れる |
ややとろみ | スプーンに残るが流れる |
とろみあり | スプーンにしっかり残る |
IDDSI基準など専門的な指標がある場合は、それに合わせて判定するとより安全です。
医師や言語聴覚士の指示があるときは、その濃度を優先してください。
とろみの濃度設定

とろみの濃度は飲みやすさと安全性に直結します。
目的や嚥下状態によって最適な粘度は変わるため、使い分けが重要です。
薄いとろみ
薄いとろみは水がややまとまる程度の粘度で、自然な喉ごしを保ちやすい特徴があります。
嚥下機能が軽度に低下している方や、薬の服用時に適した濃度です。
粉末型トロミ剤であれば100mlあたりの目安を少量増やす程度で調整します。
味や香りを大きく変えずに安全性を高めたい場合に向いています。
中程度のとろみ
中程度のとろみは飲み物がスプーンで流れるような粘度で、落ち着いて飲める感触です。
嚥下の遅れがある方や、むせやすい場面でよく選ばれる設定になります。
調整の幅が広く、薬や栄養ドリンクの混合にも扱いやすいメリットがあります。
- お茶類のとろみ付け
- コーヒーやカフェオレ
- 牛乳や栄養補助飲料
濃いとろみ
濃いとろみは飲み物がゆっくりと落ちる高粘度で、しっかりと舌で制御しやすいのが特長です。
重度の嚥下障害で誤嚥リスクを抑えたい場合や、少量ずつ確実に飲ませたい場面で使います。
濃度を上げる際は水分量とトロミ剤量のバランスに注意して、固まりやすさを確認してください。
用途 | 目安 |
---|---|
誤嚥リスクが高い場合 | 100mlあたり約2gの粉末を目安 |
少量ずつ確実に摂取したい場合 | ゆっくり落ちる粘度 |
計量と目安

とろみ剤を安定して使うためには、正確な計量が重要です。
パッケージ表示と日常の計量道具を結びつけると、混ぜすぎや薄すぎを防げます。
計量スプーン換算
粉末型と液体型で比重が異なるため、スプーン換算はあくまで目安になります。
一般的に小さじ1は約5mlで、粉末型トロミ剤では約1g前後と考えてください。
液体トロミ剤は粘度が高く、同じ容量でも重量が変わりますので、メーカーの換算表を優先して確認してください。
家庭にある計量スプーンで頻繁に作る場合は、予め少量を計って覚えておくと便利です。
分包表示の読み方
分包に記載されたグラム表記は最もわかりやすい目安です。
パッケージ表記 | 目安換算 |
---|---|
分包1g | 小さじ約0.2 |
分包3g | 小さじ約0.6 |
分包5g | 小さじ約1 |
上の表は一般的な粉末トロミ剤を基準にした目安です。
製品によっては同じグラム表示でもとろみの出方が違うため、最初は少量で試すことをおすすめします。
目分量の目安
すぐに作る必要がある場合は、見た目の目安を覚えておくと役立ちます。
- 薄いとろみが表面にうっすら広がる程度
- 中程度は液面に小さな波紋が残る程度
- 濃いとろみは液がまとまって落ちる程度
一度コツをつかめば、スプーンやカップだけでほぼ狙った濃度に合わせられます。
ただし、誤嚥リスクがある方には必ず測定器具や専門家の指示を優先してください。
飲み物別の作り方

飲み物ごとにとろみ剤の溶けやすさや風味への影響が異なります。
ここでは代表的な飲み物別に具体的な手順と注意点をわかりやすく解説します。
水
水はとろみをつけるときの基本となる飲み物で、粉末型でも液体型でも比較的扱いやすい飲み物です。
粉末型トロミ剤は先に少量の水でよく溶いてから全体に混ぜるとダマができにくくなります。
液体型トロミ剤は注ぎ入れるだけで均一になりやすいので、計量スプーンで少量ずつ調整しながら混ぜると便利です。
冷水と温水ではとろみの付き方が違うため、温度に応じて溶き方を変えることをおすすめします。
緑茶
緑茶は渋みや香りがデリケートなので、温度や混ぜ方に注意が必要です。
- ぬるめに冷ます
- 少量で溶いてから加える
- 泡立てずに静かに混ぜる
熱すぎる緑茶に粉末をいきなり入れると瞬間的にダマになりやすいため、少し冷ましてから溶くことを推奨します。
また、緑茶の成分と反応して濁る場合があるので、見た目が気になる場合は液体型のトロミ剤を試してください。
コーヒー
コーヒーは酸味と苦味が強いため、とろみを付けると味の印象が変わりやすい飲み物です。
熱い状態ではとろみが付きやすい反面、香りが飛びやすいので温度管理に気をつけてください。
粉末型を使う場合はコーヒーの一部でペーストを作り、そこに残りを注ぐとダマが防げます。
カフェインや濃度の高いエスプレッソ類は少量ずつ調整しながら濃度を決めると失敗が少ないです。
牛乳
牛乳はタンパク質を含むため、とろみ剤との相性で粘度が増したり逆に分離したりすることがあります。
粉末型はダマになりやすいので、先に少量の牛乳で溶いてから全量に混ぜる方法が確実です。
泡立て器やハンドミキサーを使うとムラなく均一に仕上がりますが、泡を減らしたい場合は静かに混ぜることが重要です。
脂肪分の高い牛乳はとろみが乗りやすく、少量で十分な粘度が得られることがあります。
果汁
果汁は酸性のため、とろみ剤の種類によっては粘度が落ちることがあります。
酸に強いタイプのトロミ剤を選ぶと安定したとろみを得やすいです。
果肉や繊維が含まれるジュースは目詰まりや分離が起こりやすいので、漉すか均一にする工夫が必要です。
冷やした果汁はとろみが付きにくい傾向があるため、温度調整しながら最終の濃度を確認してください。
炭酸飲料
炭酸飲料は泡が抜けやすく、一般的にとろみをつけるのが最も難しい飲み物です。
強い攪拌や急激な混合で炭酸が抜けるため、静かに混ぜるかあらかじめ少しガスを抜いてから調整してください。
課題 | 対処法 |
---|---|
泡立ち | 静かに注ぐ |
ガス抜け | 少量ずつ混ぜる |
分離 | 酸に強い剤を選ぶ |
とろみを一定に保ちながら炭酸を残すには、液体型トロミ剤を少量ずつ加えるのが有効です。
しかし完全に炭酸感を残すのは難しいため、必要性を考えてから調整することをおすすめします。
保存方法

とろみをつけた飲み物は保存方法によって風味や安全性が大きく変わります。
ここでは冷蔵保存や室温での取り扱い、再加熱のコツと、適した容器の選び方をわかりやすく解説します。
冷蔵保存期間
基本的には冷蔵保存がもっとも安全で、保存中の雑菌増殖を抑えられます。
とろみをつけた飲み物は速やかに冷ましてから冷蔵庫に入してください。
飲料 | 推奨保存期間 |
---|---|
水 | 24時間 |
緑茶 | 24時間 |
コーヒー | 24時間 |
牛乳 | 24時間 |
果汁 | 12時間 |
とろみ調整後の飲料 | 48時間 |
上表は目安であり、使用したトロミ剤の種類や衛生状態によって変わります。
保存する際は容器に作成日時と中身をラベルしておくと、管理が楽になります。
室温保存
室温保存は基本的に避けるべきで、長時間放置すると安全性が低下します。
提供までの短時間に限って行う場合は、清潔な環境で2時間以内を目安にしてください。
夏場は特に室温が高くなりやすいので注意が必要です。
やむを得ず置くときは直射日光を避けて風通しの良い場所にしてください。
再加熱
再加熱はとろみの性質を変えやすいので、方法を選んで慎重に行ってください。
電子レンジを使う場合は短時間に分けて加熱し、その都度よくかき混ぜて均一なとろみを確認してください。
沸騰させると粘度が変化したり分離することがあるため、完全に沸かさないように心がけます。
温度確認は必ず行い、提供前に手首などで熱さを確かめてください。
容器選び
保存容器は密閉性と洗浄のしやすさで選ぶと管理が楽になります。
- 密閉容器
- 耐熱ガラス容器
- 広口の保存瓶
- 計量目盛り付きカップ
- 匂い移りしにくい素材
プラスチック容器を使う場合は耐熱温度や匂い移りに注意してください。
冷蔵庫内では倒れにくい形を選ぶとこぼれのリスクが減ります。
使い回す容器は毎回よく洗って乾燥させ、カビや臭いの発生を防いでください。
安全に使うための最終チェックポイント

とろみ水を提供する前に、濃度が処方や指示どおりか必ず確認してください。
ダマや分離がないか、よく混ざっているかを目視ととろみ判定で確認します。
温度が高すぎたり低すぎたりしないか、飲みやすい温度か確認してください。
使用したトロミ剤や飲料の賞味期限、分包表示を確認し、新しいものを使うことを推奨します。
容器と計量器具は清潔に保ち、同じスプーンでの複数用途を避けてください。
誤嚥リスクがある方には少量ずつ与え、反応や嚥下状態を観察してください。
薬と混ぜる場合は薬効や飲み合わせを医師や薬剤師に相談してください。
記録を残し、誰がどの濃度で作ったか明確にしておくと安全性が高まります。