家庭で飲み水をもっと安全に、無駄なく作りたいと感じていませんか。
逆浸透膜(RO)を使えば高純度の水が得られる一方で、機器選びや設置、給水水圧や排水処理、フィルター交換といった実務面で迷うことが多いのが実情です。
本記事は初心者向けに、必要な機器と設置手順、初期フラッシングや運転チェック、水質測定、ミネラル補給法まで実践的に丁寧に解説します。
さらに費用やランニングコスト、用途別の使い方、保管・衛生管理にも触れ、導入後に困らないポイントを網羅します。
まずは家庭でのRO水の作り方を段階的に確認していきましょう。
家庭でのRO水の作り方

家庭で逆浸透(RO)水を安定して作るには、機器の選定と正しい設置、日常の点検が重要です。
ここでは必要な機器から設置手順、運転チェック、保管まで実用的に解説します。
必要な機器
ROユニット本体がもっとも重要で、膜の種類や処理能力を製品仕様で確認してください。
前処理フィルターとして、プレカーボンフィルターやセディメントフィルターが必要になります。
貯水タンクと専用のタップや分岐アダプターがあれば、生成水を安定して供給できます。
TDSメーターやpH試験紙などの簡易測定器を用意すると、水質管理が楽になります。
配管やバルブ、工具などの設置資材は初回設置時に揃えておくと作業がスムーズです。
設置手順
設置は手順を守れば家庭でもできる作業ですが、自信がない場合は業者に依頼するのが安全です。
- 設置場所の確保
- 給水接続
- 排水接続
- 電源接続(必要なモデルのみ)
- プレフィルターのセット
- RO膜の取り付け
- 貯水タンクと専用タップの接続
- 漏れと配管の最終確認
順番に作業を進めて、接続部分は締めすぎず緩みがないか確認してください。
初期フラッシング
新しいRO膜やフィルターは出荷時に保存液や製造残渣が付着していることがあるため、必ず初期フラッシングを行います。
メーカーの指示に従い、最初は一定量の生成水を捨てるか流して捨ててください。
一般的には貯水タンクが満杯になるまで数回通水するか、指定量のリットルを流すことが推奨されます。
初期流出水のTDSが徐々に安定してくるのを目安にしてください。
運転チェック項目
日常的に確認すべき主要項目を表にまとめます。
項目 | 目安 |
---|---|
原水TDS | 数十から数百 |
生成水TDS | 1〜50 |
運転圧力 | 3〜6bar |
廃水比 | 1:3から1:5 |
流量低下 | 注目点 |
表の数値は目安ですから、製品マニュアルや地域の水質に応じて調整してください。
水質測定方法
TDSメーターで溶存固形分を簡単に測定できますので、生成水の基本チェックには最適です。
電気伝導度(EC)測定やpH測定も行えば、より詳細な水質把握が可能になります。
市販の試薬や水質検査サービスを利用すると、微量金属や細菌などの検査も実施できます。
測定は初期と定期、フィルター交換後に行ってトレンドを把握してください。
ミネラル補給方法
RO水は不純物を徹底的に除去するため、飲用にはミネラル補給が必要な場合があります。
専用のリミネラルカートリッジを通す方法がもっとも簡単で、味とミネラルバランスを整えられます。
ミネラルストーンやミネラル添加液で調整することも可能ですが、量や成分に注意してください。
赤ちゃんのミルクなど用途によっては医師や専門家の指示に従うことをおすすめします。
廃水処理方法
ROシステムは一定量の廃水を出しますので、無駄にせず再利用を検討すると経済的です。
掃除用や庭の散水、トイレ洗浄など生活用水として再利用する方法があります。
ただし、用途に応じて衛生面の配慮が必要で、飲用には適しません。
廃水をそのまま下水に流す場合は地域の規制を確認し、必要なら希釈や処理を行ってください。
保管と衛生管理
生成水は貯水タンクや容器に入れて長期間放置すると微生物が増える可能性がありますので、定期的に清掃してください。
タンクの消毒やフィルター交換はメーカー推奨の周期を守ることが重要です。
貯蔵容器は密閉して直射日光を避け、清潔な状態を保ってください。
使用前に一度短時間でフラッシュすることで、滞留水を排出できて衛生面が向上します。
RO膜の仕組み

この章では家庭で使うRO膜がどのように水を処理するかを、できるだけ平易に説明します。
基本的な原理や性能指標、そして適切な前処理について理解しておくと、導入後のトラブルを防ぎやすくなります。
逆浸透原理
逆浸透とは半透膜を使って水分子だけを選択的に通す仕組みです。
自然に起こる浸透現象とは逆方向に圧力をかけて、濃度の高い側から低い側へ水を押し出します。
膜の微細な孔は水分子より大きなイオンや有機物をほとんど通さないため、溶解性の不純物が除去されます。
このとき必要な圧力は水の透過を促す一方で、浸透圧を超えることが重要です。
膜面では溶質が蓄積して濃度が上がる現象が起きやすく、これを濃縮極化と呼びます。
濃縮極化やスケールの蓄積を抑えるために、前処理や適切な運転条件が欠かせません。
膜性能指標
RO膜の性能は複数の指標で評価されます。
代表的なものは除去率や透水量、回収率などで、運用条件で変化します。
指標 | 目安 |
---|---|
除去率 | 高いほど純水性向上 |
透水量 | 製品ごとに定格表示 |
回収率 | 運転設定に依存 |
耐久性 | 寿命と洗浄頻度 |
表の数値はカタログや試験条件に基づく目安ですので、実際の運転では確認が必要です。
前処理フィルター
RO膜を長持ちさせるためには、前処理で大きな粒子や塩素、スケール成分を除去することが重要です。
- 粗目プレフィルター
- 活性炭フィルター
- 軟水化装置またはスケール抑制剤
- 微粒子フィルター(5μmなど)
これらを適切に組み合わせることで、膜の目詰まりや化学的劣化を防げます。
また、水質に応じて前処理の内容を見直すことをおすすめします。
設置時の注意点

家庭用のROシステムを設置する際には、給水の条件や排水の扱い、電源周りの安全性などを事前に確認しておくことが重要です。
ここで紹介するポイントを押さえると、トラブルを減らし、長く安定して使えるようになります。
給水水圧
RO膜は適切な給水圧で初めて期待どおりの脱塩性能を発揮します。
項目 | 目安 |
---|---|
最小動作水圧 | 30 psi |
推奨水圧 | 40-60 psi |
最大耐圧 | 80 psi |
給水圧が低いと浄水量が落ち、廃水比が悪化しますので、圧力計で確認してください。
給水圧が不十分な場合はブースターポンプの導入を検討すると、膜の性能を取り戻せます。
水圧が高過ぎる場合は減圧弁を取り付けて、システムの破損を防いでください。
排水処理
ROシステムは浄水に対して一定割合の廃水を発生させますので、排水経路の確保が必須です。
排水を直接下水へ流す場合は、適切なトラップや逆流防止措置を設けてください。
- 排水管直結
- 中間タンク設置
- 園芸用水として再利用
- 雑排水処理設備への接続
再利用する際は塩分や残留物の影響を考慮し、用途に応じて使い分けてください。
電源と安全対策
電動のブースターポンプを使う場合は、アース付きコンセントの確保が必要です。
感電防止のために湿気の多い場所での延長コード使用は避けてください。
過電流保護やサージプロテクターを導入すると、機器の故障リスクを下げられます。
施工時には配線の取り回しを明確にし、子供やペットが触れないように表示やカバーを設けてください。
凍結対策
RO配管や貯水タンクが凍結すると破損するため、設置場所の温度管理が重要です。
寒冷地では保温材を巻くか、トレースヒーターを導入して配管を加温してください。
長期不在で凍結の恐れがある場合は、システムの排水と膜の取り外しを検討すると安全です。
屋外設置やガレージなど寒暖差が大きい場所では、凍結防止機能のあるモデルを選ぶと安心です。
費用とランニングコスト

家庭でRO水を運用する際に気になるのは、初期費用と継続的なランニングコストです。
ここでは導入にかかる費用の内訳と、定期的に発生する交換費用や水道料金、廃水の取り扱いまで分かりやすく解説します。
初期費用
RO浄水システムの本体価格は機種や機能によって幅があります。
カウンタートップ型は比較的安価で、機器本体が1万円台から見つかる場合もあります。
アンダーシンク型の本格的なモデルになると、本体とタンクで3万円から10万円程度が目安です。
家庭用でもブースターポンプや大容量タンク、ミネラル添加機能を付けると費用が上がります。
設置費用も考慮が必要です。
自己設置が難しい場合は、配管接続や給排水処理を業者に依頼すると1万円から3万円程度の工賃がかかることがあります。
購入前に設置スペースや給水条件を確認し、見積もりを複数取ることをおすすめします。
フィルター交換費
フィルターは種類ごとに交換時期と費用が異なります。
- 前置セディメントフィルター
- 活性炭フィルター
- RO膜カートリッジ
- ポストカーボンフィルター
- ミネラルカートリッジ
一般的な交換目安は前処理フィルターが6〜12か月、RO膜は2〜3年です。
フィルターの価格幅は広く、セディメントカートリッジは数百円から2千円程度、活性炭は千円から5千円程度が多いです。
RO膜は性能によりますが、5千円から2万円程度が相場です。
交換頻度と使用水量によって年間コストが変わりますので、メーカー推奨の交換スケジュールに沿って管理してください。
定期的に交換することで膜の寿命を延ばし、安定した水質を保つことができます。
水道料金と廃水量
ROシステムは生成水と廃水が発生します。
廃水比率は機種や水圧で変わりますが、家庭用の多くは生成水1に対して廃水3から廃水5となることが一般的です。
高効率なモデルやブースターポンプを使うと、廃水を1対1から1対2程度に抑えられる場合もあります。
月間の生成水量と廃水量を把握すると、水道料金への影響が予測できます。
以下は代表的な運用シナリオの目安です。
生成水量/月 | 廃水比率 | 廃水量/月 |
---|---|---|
30 L | 1対3 | 90 L |
100 L | 1対4 | 400 L |
200 L | 1対2 | 400 L |
上の表は一例ですので、実際の比率は機器仕様書で確認してください。
廃水をそのまま排水する場合は、水道料金に加えて下水道使用料が発生する点にも留意が必要です。
廃水を節約する工夫としては、廃水を洗い物や掃除、植木の水やりに再利用する方法があります。
ただし、水質面で飲用には適さないため、用途を限定して使うことが重要です。
ランニングコストの総額を抑えるには、フィルターの適切なメンテナンスと高効率機の選択、廃水の有効利用が鍵になります。
用途別のRO水の使い方

用途別のRO水の使い方について、家庭での実例を交えて分かりやすく解説します。
RO水は不純物やミネラルを大幅に除去した純水に近い性質を持ち、用途に応じた調整が重要です。
飲用
RO水は味がすっきりして飲みやすい反面、ミネラルが不足しやすい点に注意が必要です。
- そのまま飲む場合はミネラル補給を検討
- 長期保存は冷暗所を推奨
- 飲み比べで好みの硬度を見つける
飲用に使う場合は、ミネラル添加カートリッジやミネラルスティックで適度に調整してください。
硬度やTDSを小さく変えるだけで、味や飲みやすさが大きく変わります。
赤ちゃんのミルク
赤ちゃんのミルク作りにRO水を使うときは、安全性とミネラルのバランスに特に気を配る必要があります。
まず、調乳の前には必ず水を沸騰させ、規定時間冷ますなどの衛生処理を行ってください。
RO水はミネラルがほとんど含まれないため、メーカーや小児科の指示に従ってミネラル補給を検討してください。
疑問があれば必ずかかりつけ医に相談して、赤ちゃんに最適な水質を確認してください。
コーヒー・お茶
コーヒーやお茶にRO水を使うと、雑味が減り素材本来の風味が出やすくなります。
一方で適度なミネラルが抽出を助けるため、完全に無ミネラルのままだと味に物足りなさを感じる場合があります。
好みの味を作るために、少量のミネラル添加や一部を水道水にするなど調整してみてください。
バリスタや茶師のアドバイスを参考に、TDSを目安に抽出条件を調整すると再現性が高まります。
美容・洗顔
RO水は不純物が少ないため、洗顔や化粧水作りに使うと肌への刺激が減る可能性があります。
しかし、肌には適度なミネラルや皮脂が必要で、完全な純水を頻繁に使うと乾燥を招くことがある点に注意してください。
敏感肌の方はまず小さな範囲でパッチテストを行い、問題がなければ一部置き換えで使い始めると安心です。
顔をすすぐ際には最終的にぬるま湯やミネラルを含む水で仕上げる方法も有効です。
水槽飼育
水槽でRO水を使う利点は、水質を精密にコントロールできる点にあります。
用途 | 目安 |
---|---|
淡水熱帯魚 | TDS 50-200 ppm pH 6.5-7.5 |
西洋型ディスカス | TDS 30-100 ppm pH 5.5-6.5 |
海水水槽 | RO plus リーフソルト比率調整 |
使用時は必ず徐々に水合わせを行い、急激な水質変化で魚や水草にストレスを与えないでください。
必要に応じて市販のリカルシフィケーション剤やバッファを用いて目標の硬度やpHを作ってください。
精密洗浄
精密機器や光学機器の洗浄には、溶解したミネラルが残らないRO水が非常に有利です。
電子部品の洗浄では、RO水に加えさらにイオン交換を施したDI水を最終すすぎに使うケースが多いです。
取り扱いは清潔な容器を使い、手作業では手袋やピペットを活用して二次汚染を防いでください。
高い純度が必要な場面では、ROのみならずフィルターや貯蔵方法の管理も重要です。
安全にRO水を扱うための最終確認

最終確認として、ROシステムの稼働状態と設置周囲をひと通り点検してください。
まず水質はTDSメーターやpH測定で確認し、普段と大きく異なる数値が出ていないか確かめます。
給水・排水の接続部に漏れがないか、配管やタンクの汚れがないかも忘れず点検しましょう。
フィルター交換時期とプレッシャー表示を確認し、交換や専門点検が必要であれば速やかに手配してください。
飲用や赤ちゃんのミルクに使う場合は、ミネラル補給や加熱による衛生処理を行い、安全基準を満たしているか再確認します。
廃水の処理方法や排出量についても見直し、地域のルールや環境負荷に配慮した対応を心がけてください。
最後に点検記録を残し、異常があれば専門業者に相談することをおすすめします。